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今回は、故人様の「旅支度」についてお話しさせていただきます。
葬儀の準備をしてるとき、「故人に足袋や杖などを用意するのはなぜ?」と疑問に思われたことはありませんか?
故人様に身につけてもらったり、柩の中に添えたりする「旅支度」。
昔から日本の葬儀で行われてきた習慣の一つですが、そこにはどのような意味があるのでしょうか。
故人様があの世へ旅立つための準備として、仏衣や足袋、脚絆、手甲、頭陀袋、杖などを用意する習慣です。
昔の人々にとって旅は、今よりもずっと大変なものでした。
歩いて長い道のりを進み、山や峠を越えることも珍しくありません。
そのため、故人様がこれから長い旅に出ると考え、"旅に必要なものを整えて送り出す"という意味が込められています。

仏教では、亡くなった後の世界についてさまざまな考え方があります。
その中で、故人様がこの世を離れ、次の世界へ向かうことを「旅立ち」と表現することがあります。
故人が無事に旅を続けられるように。
そんな願いを込めて、旅に必要なものを整えてあげるのです。
「もう会えない」という悲しみだけではなく、「どうか無事に旅をしてほしい」という家族の願いを形にしたものともいえるでしょう。
地域や宗派、葬儀の習慣によって異なりますが、一般的には次のようなものを用意します。
・仏衣(経帷子)・・・・・着用する衣装
・足袋、わらじ・・・・・足袋の道中に履くもの
・手甲、脚絆・・・・・旅装束の一部
・頭陀袋・・・・・旅の荷物を入れる袋
・杖・・・・・長い旅を支えるもの
・笠・・・・・雨や日差しから身を守るもの
これらを一式そろえ、故人様の旅支度を整えます。
ただし、現在では実際の品物ではなく、紙で作られたものを使用する場合もあります。

「旅支度」は昔から伝わる葬送習慣のひとつですが、すべての宗派・地域で同じように行われているわけではありません。
また、近年では故人様の負担や安全面、火葬の都合などから、実際に身につけるものを簡略化することもあります。
葬儀の際には、宗派や地域の習慣、火葬場の規定などに合わせて行うことが大切です。
旅支度を整える時間は、ご家族にとって故人様との最後の大切な時間でもあります。
ひとつずつ身支度を整えながら、
「これから長い旅に出るんだね」
「気をつけてね」
「向こうでも元気でいてね」
そんな思いを胸に、故人様を送り出します。
旅支度は、単なる昔ながらの習慣ではありません。
大切な人の旅立ちを見守り、無事を願う、家族の優しい気持ちが込められた儀式なのです。

今回は、故人様の「旅支度」についてご紹介しました。
葬儀には、私たちが普段何気なく見ているものにも、ひとつずつ意味があります。
故人様の旅支度を整えることも、その一つ。
大切な人が安心して旅立てるように、身の回りを整えてあげる。
そこには、時代が変わっても変わらない故人様を思うご家族の気持ちが込められているのかもしれません。
平安会館・文十鳳凰殿
平出 育美
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